噂 5

 

「姉さん…」

 

 

崖の上に小さく盛られた土が幾つも並んでいた…

 

そして、その中の比較的あたらしい小山の前で、長い紫の髪を風になびかせて彼女は泣いていた。

 

「…○○…行くぞ。時間だ。」

 

背後から現れた、紫の髪の彼が強い風に目をしかめながら言った。

 

「…××は、いつもそうだ…」

 

「…は?」

 

「姉さんが死んだんだ…もっと…時間をくれよ…」

 

「時間…?この世界にそんなものは無いのに…」

 

 

自嘲気味に笑った彼は、大きく手を広げ空を仰いだ。

 

 

「…無くても…僕には、時間が必要なんだ…」

 

「シスコンがメソメソしてんなよ。」

 

「××は、誰も亡くしてないからそんな事言えんだ…僕にとって…」

 

「姉さんは、唯一の身寄りだったんだ。だろ?」

 

「…」

 

「俺は、身よりなんか居ねぇんだよ。」

 

「けど…××にとって姉さんは・・・」

 

「大切な人?」

 

「違うの!?」

 

「…泣いても、帰ってこねぇんだよ。」

 

 

小さく笑って彼は、崖の上から去っていった。

 

 

崖の上には、小さな小山とすすり泣く彼女が残った。

 

 

 

 

 

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